2019年2月25日月曜日

グッバイフジヤマの活動停止のお知らせを受けて

グッバイフジヤマの活動停止のお知らせを受けて

 



つくづく、音楽は思い出で、バンドは生身だなと感じた。

2019.02.23 グッバイフジヤマというバンドが活動停止を発表した。
アルバムリリースを告知してからの突然の知らせだった。


僕が活動停止を知らされたのは今月の頭だった。
北浦和KYARAでのライブを見たその後、
最近全く遊んでもないし、お互いの私生活をそれとなくLINEでやりとるする仲になっていた僕は、
久しぶりに面と向かって話をする機会に、
胸の奥がちょっとだけ痒くなる、ドキドキした感情があった。

グッバイフジヤマのボーカルギター、ナカヤマタクヤは僕の目の前に現れるなりニヤニヤしながら
”久しぶりだな!俺たち活動停止するかもしれないんだぜ。”
と、開口一番とんでもない爆弾を投下して来た。
久しぶりに会うにも関わらず、だ。

”そうなんですね”と一言だけ返した。
いつだって僕らは、誰かが決めたことに対して否定なんてしない。
僕もナカヤマタクヤも、いい意味でも悪い意味でも変わらないんだな。
そんなことを思いつつ、僕は脳内で、"活動停止するかもしれない"その事実を噛み砕きながらいろんな思いを巡らせた。


グッバイフジヤマ、元の名をルンペンフジヤマは
2011年高円寺にて活動を開始する。
パワーポップを基盤に、自分自身のフラストレーションを乗せた初期衝動全開のサウンドは、
小さなライブハウスに数えきれない歓喜とため息を残す。

現役バンドマンで、グッバイフジヤマよりセールスも知名度も演奏能力もない僕が、
グッバイフジヤマを上から目線で切るのは勘違いも甚だしいが、
確かにそう思わざるを得ない現場に、僕は何度も直面したのだ。

結成当初は、フラストレーションが爆発しすぎ、演奏が途中で止まり笑ってごまかしたり、
ステージ上で気に入らない誰かの悪口をぽろっと言ってしまったり、
忘れてしまった歌詞がそのまま出てこなかったり。

そんなどうしようもない失敗話は、
思い出したらきりがないほど、僕の心の中に残り続けている。

そんなとき、ナカヤマタクヤという男は決まって、
"大丈夫なんだよ、間違ってなんかないよ"
と自分を肯定する。
はたから見たら明らか凹んでいそうなのに、この男はどこまでも強がる。
弱さを人に見せるのが極端にへたくそな人間なのだ。

僕らは見えない未来に不安だ。どうなるかなんてわからない。
日々焦燥感と戦い、曲にし、目の前に起きた現実を受け入れているのか、
受れられないのかギリギリのところで戦い続けているんだ。

そんな彼らが、なぜここまで僕らの心をつかんで離さないのか。
それは、どこまでもまっすぐで、音として飛ばす一言一言に偽りがなく、
誰しもが抱える心の隙間にちょうど入り込んでくる。
情けなくてセンチメンタルで、素直になれないのに、
そんなこと、見通されてしまう不器用さ加減。

いつか自分が体験したような、ほほを赤らめてしまうような出来事を、
まるで僕らを代弁してくれるかのように彼らはでっかい声で歌う。
ライブを見ると重ねてしまうんだ。いつだったかのダメな自分を。

だから、自然とグッバイフジヤマを応援してしまう。
グッバイフジヤマのステージに向かって呟く、ガンバレ、負けるなオレ。

そうやって得た共感の輪は、僕の知らないところで大きくなり、
たくさんの人の苦悩を巻き込み、彼らはメジャーデビューの切符を手に入れた。

そう、グッバイフジヤマは僕たちの苦悩だ。
2011年から現在まで、グッバイフジヤマはたくさんの作品を世に出してきた。

全部の作品を聞いてきた。
もちろんまだ世に出ていない、キャッチャー・イン・ザ・ヘルも含めて。
4月リリースされる今作をきいて、疑問が確信に変わった。
ナカヤマタクヤは作品ごとに人知れず悩み、これでいいのだと決意し、
自分自身の苦悩をパッケージしてきたのだ。

グッバイフジヤマと僕らは同じ、"こっち側の人間"だからこそ
まっさらなフィルターで彼らを見ることができ、絶対的な信頼感の元、彼らを応援することができる。

そんなグッバイフジヤマが活動を停止することを選択した。
取り残された僕らの苦悩はどうするつもりなんだ。
活動停止を発表された夜、身勝手ながら僕はそんなことを思った。


彼らはいつだってポジティブだ。
どんなにへこたれることがあっても、彼らは常に前だけを見て邁進していた。

前述のため息してしまう出来事だったり、
それこそメンバーの脱退や環境の変化。
全部乗り越えて、僕らに共感と安心感を与え続けてくれたじゃないか。

だからきっと大丈夫。
グッバイフジヤマはなくなってしまうけれど、
近い未来、すぐ"間違ってねえよ"って強がった姿が見られることがあるだろう。

悲しいかな、今作のリリースツアーで活動停止してしまうけれど、
グッバイフジヤマとしては最後になるらしいから、一つや二つの憎まれ口を叩きに行こうぜ。
ナカヤマタクヤの不格好なダイブを受け止めてやろうぜ。

思い出はいつだって色褪せない。
みんなの中にだってグッバイフジヤマのそれぞれのストーリーや思い出があるだろう。
今まで描いた思い出に最後、色を付けに行こうよ。
へたくそな絵に、へんてこな色を最後に塗ってみんなで笑い合おう。
そうして僕は、グッバイフジヤマとの思い出に、鍵をかけようと思う。
いつの日にか、僕らが心から笑えますように、と。

2019.02.25 either Vo/Syn 佐々木 翔
勝手に寄稿